人事院は国家公務員が不妊治療のために年間最長10日間の有給休暇を取得できる制度を新たに創設すると発表しました。今回は不妊治療と仕事の両立について、企業の課題などをふまえて考えたいと思います。

国家公務員の不妊治療休暇 年間最大10日

労働基準法では出産予定のすべての女性に産休(産前休業・産後休業)、一定の条件を満たした男女に育休(育児休業制度)が取得できるよう定められています。出産予定がある人に対してはこのように制度が整えられていますが、不妊治療を受けている人には休暇制度などはなく、これまで働きながら治療する事に難しい点がありました。
厚生労働省の調査によると、仕事と不妊治療との両立ができず、16%の人が離職しているという結果も出ています。貴重な人材の損失は企業の損失にもつながります。長く働きやすい環境を整えるためにも新しい制度が必要だという声が次第に大きくなっていきました。

参照)厚生省リーフレットより
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11910000-Koyoukankyoukintoukyoku-Koyoukikaikintouka/0000197933.pdf

2021年8月10日、人事院は国家公務員の不妊治療休暇に関する新制度改正案をまとめ、川本総裁より菅総理大臣に手渡しされました。内容は、男女ともに不妊治療のために年間最長10日間の有給休暇を取得できる新たな制度を設けることなどを盛り込んだもので、この新制度は2022年1月から導入となります。
たった10日間では足りないという声があるのはもっともですが、不妊治療のための休暇制度が開始されるということは社会的にも大きな意味があり、これからの新しい時代の働き方に必要な改革だと言えます。

不妊治療のための助成金

不妊治療と仕事の両立を支援する助成金

今回の不妊治療休暇に関するニュースはメディアでも大きく取り上げられていましたが、かねてより厚生労働省では中小企業事業主向けに不妊治療と仕事の両立を支援する助成金制度があります。

・ 両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)
支援対象となる事業主が支給要件を全て満たした場合、1中小企業事業主28.5万円(生産性要件を満たした場合の支給額は36万円)の助成金を受け取れます。

参照)https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000764627.pdf

また、厚生労働省では不妊治療を受けやすい職場環境整備に向けた検討チームを構成し、シンポジウムの開催など、不妊治療に対する理解と関心を深めるための職場環境整備を積極的に進めています。

参照)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14408.html

日本の体外受精実施件数は増加傾向

日本産科婦人科学会によると、日本の体外受精の実施件数は、2016年には世界一の44.8万件となり、年々増加傾向となっています。近年の晩婚化等で不妊治療を受ける夫婦は増えており、今後も体外受精の実施件数は増加することが見込まれています。
このような社会的背景もあって、今回の不妊治療休暇制度は、不妊治療と仕事の両立を支援するものとして有効であると考えます。

参照)図表1-2-10 体外受精実施件数と体外受精による出生児数
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-02-10.html

企業の不妊治療休暇制度導入はどうする?

先ずは官が率先して取り組むべきこととして設けることになった不妊治療休暇制度ですが、今後、民間企業でも導入が始まる可能性は十分にあります。近い将来、各企業で制度導入の検討をする時がやってくることでしょう。
不妊治療を受ける人が増えていく中、休暇制度の見直しは見逃せ無くなる可能性が出てきます。日々の暮らしや働き方の変化とともに、その支援の役割を担う休暇制度も改革していかなくてはなりません。どのように変わっていくのか、今後も動向に注目です。